アスペルガー人ならではの言語感覚 /コミュニケーションの問題 (1)

アスペルガーの思考と生き様

アスペルガー症候群の特性は、次の3つの大きな柱に関連付けることができます。

  • コミュニケーションの問題
  • 対人関係、社会性の問題
  • 偏執的なこだわり

そこから派生する、アスペルガー人ならではの思考・行動パターンは多岐にわたります。その中で「コミュニケーションの問題」はどのような形で表面化しているのでしょう。
その根源には、超合理的思考と直接的すぎる言語感覚が織りなす「他者との感覚のズレ」があります。

言葉の刃物で切りつける

アスペルガー人の発する言葉は、時に鋭利な刃物のように相手に襲い掛かります。
その鋭さは、相手の感情への配慮に欠けた、清々しいほどの直接的な表現によるものです。
例えば、成績がよくない人には「頭悪いね」、仕事ができない人には「使えないね」、あまり好ましく思っていない人には「死んだほうがいい」など、それを言って相手がどんな感情を抱くかなどお構いなしに、頭に浮かんだ言葉を何のフィルターを通すこともなく発してしまいます。

気分がネガティヴな時、その傾向は特に酷くなります。
誰かの悪口を言ったり何かを批判している時などは、味方についている人までもが引いてしまうほどの、強く汚い言葉を使ったりするのです。

そこには1ミリも悪気はありません。言った後の相手の反応に当惑することがあるだけです。
「だってそうじゃないか」というのがアスペルガー人の言い分です。
「そうかもしれないけど、言い方ってものがあるじゃない」というのが普通の人の言い分です。
あなたはそれを言われて平気なのか、と言われて初めて気づくのです。

一方で、ポジティブな話をしている時は、これとは全く逆の効果が現れます。刃物のような直接的すぎる表現が何かを褒めたり称賛する方向に向けば、ふだん刺さるような言葉を使うだけに、より重みをもって相手に届くのです。
しかし特に相手が異性の場合は、セクハラ発言やストーカーと捉えられてしまうこともあるので、褒めるにしても場や内容についての配慮は怠ってはなりません。

また、持ち前の超論理的思考と刺さる言葉が上手く噛み合うと、議論の場で本領を発揮できます。膠着した話し合いに風穴を開ける一言を放ったり、あれこれ考えすぎて答えが見つからない人の悩みを一気に解決させたり、皆が言いたいけれど言えないことをズバっと言って事態を好転させたりすることもできるのです。

人の心を切り刻む凶器にもなれば、場を調理する包丁にもなる。
まさに諸刃の剣ですね。

アスペルガー人は、直球しか打ち返せない

アスペルガー人は、発する言葉が直接的なら、受容できる言葉も直接的です。
だから、主語がなかったり表現が曖昧だったりすると、いちいち確認せずにはいられません。曖昧な部分が何を指すのかを、場の状況や話の流れから察することが苦手なのです。
「ちょっと多めに入れてくれ」
「ソレって、いつものアレだよね」
などと言われた時に、想定しうる回答が複数あると、
「何を? 多めって何グラム?」
「ソレって何? アレって何?」
となって混乱してしまいます。

曖昧な部分を感覚的に理解できないから、言葉の行間を読むことや、皮肉や冗談やお世辞などの間接的表現をそのように捉えることも苦手です。つまり、相手の発した言葉を額面通りに受け止めてしまう傾向が強いのです。
まだ経験と知識がない幼児期は、よく親が言う「そんなことする子はウチにはいらないよ」とか「夜更かしするとオバケが出るよ」というような言葉に大パニックを起こします。
もちろん大人はこうはなりません。しかしそれは、これが真実ではないことを長年の経験と知識の集積によって知っているからであり、決して冗談や皮肉を額面通りに受け止めない術を身につけたわけではないのです。自分の知識や経験が及ばない範囲の言葉は、相も変わらず額面通りに受け止めてしまいます。

これは、恋愛や交渉の場での「言葉を使った駆け引き」においてとても不利に働くので、何とかしたい部分ですね。
アスペルガー人の場合、この能力不足を克服するには、経験値を積んで知識でカバーするしかありません。
しかし、何があっても「苛立ちを表に出さない」ことに徹するだけで、無駄に不利な状況に陥ってしまうのを回避できることが結構あります。これが結構難しいのですが…。

完璧主義が言葉の理解を妨げる

例えば、知らない単語が一つ含まれる文章があって、自分の中でその文章への理解度は80点だと思ったとします。普通の人は80点分の理解ができていれば、不足分は無意識のうちに文脈や経験値から補うことができるので、それは「理解できた」ということになります。場合によっては50点以上なら「理解した」の範疇に入れる人もいます。しかし完璧主義のアスペルガー人にとっては、100点でなければ「理解できていない」となってしまうのです。

その時のアスペルガー人の頭の中は、パズルを組み立てているような状態になっています。
「話の流れからすると、この単語はA・B二つの意味が考えられる。この単語がAの意味だったら全体はこうなるし、Bの意味だったら全体はこう変わってくる。その中でより合ってそうなのはAだけど、それは自分の推測に過ぎない。自分の知らない違う意味もあるかもしれないし」
などという超論理的思考が邪魔をして、たとえ80点であっても「なんとなくは理解できたけど。。」という自己評価にとどまってしまうのです。

さらにアスペルガー人は、完璧主義の傾向から、分からないものを分からないままにしておくことができません。最近は手元にスマホがあるから疑問があるとすぐに検索魔になってしまうし、話し相手が家族や仲のいい友人ならば、納得がいくまで質問攻めにしてしまいます。
特に幼い子供は「なんで」をひっきりなしに親に投げかけます。
「なんで空は高いの?」
「なんで空は青いの?」
「なんで空は空っていうの?」
質問される親も大変です。
しかもアスペルガーの完璧主義は、相手の話の内容にも耳を光らせます。言葉の断片に見え隠れする矛盾、その人の過去の発言や自分の知識とのちょっとした違いをも見逃しません。見つけてしまうとそれを相手に指摘し、疑問点を解消させずにはいられません。

よほどのスルー技術を身につけていなければ、ストレスフリーでの対応は難しいでしょう。
だからこそアスペルガー人は、そのことを意識する必要があります。博識な人でないと答えられないような質問や、相手を追い込むような質問攻めは、頭に浮かんでも自分の中に留めておかなければいけません。
そこまで自分にとって重要なことでもないのに質問をして、その内容が専門的すぎて質問された方はただ答えに困るという、誰も得しない状況を生んでしまうのですから。

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