アスペルガー人はなぜ会話が苦手なのか /コミュニケーションの問題(2)

アスペルガーの思考と生き様

アスペルガー症候群の特性は、次の3つの大きな柱に関連付けることができます。

  • コミュニケーションの問題
  • 対人関係、社会性の問題
  • 偏執的なこだわり

そこから派生する、アスペルガー人ならではの思考・行動パターンは多岐にわたります。その中で「コミュニケーションの問題」はどのような形で表面化しているのでしょう。
その根源には、超合理的思考と直接的すぎる言語感覚が織りなす「他者との感覚のズレ」があります。

意味のないことに意味を見出せない

アスペルガー人の思考回路は、どんな時でも合理性と論理性が根幹にあります。

それはコミュニケーションの場でも同じなので、目的や方向性が見えなければ、コミュニケーションそのものに意味を見出すことができません。
意味がないと思うから、楽しめない。楽しめないから、次に広がらない。
それに加えて自意識過剰な面もあるので、広げられない自分に引け目を感じてしまいます。
だから積極的になれないのです。

コミュニケーションの基本として、雑談があります。
雑談の内容は、明日になれば忘れてしまう程度のとりとめのないことが多いですが、気楽に話し笑い合う時間を共有することにこそ意味があります。こういう小さな会話の積み重ねが、良好な人間関係を作る土台になるというものです。
しかし常に合理的なアスペルガー人は、相手や話題に関心が向いていなければ、雑談そのものが無駄な時間だと感じてしまいます。

普通の人の頭の中はそこまで合理的ではないですし、常に目的を持って会話をしているわけではありません。その場を有意義なものにしたり、物事をうまくまとめたりするために、合理性より感情の方を優先させることが普通のこととして行われます。
しかしアスペルガー人は、それすらも論理的思考で解決させようとします。場の空気や相手の感情を感覚的に理解する能力に欠けているから、自然とそうなってしまうのです。

もちろん感情論では解決できないこともたくさんありますが、そうでない場面でもアスペルガー人は「それは感情論でしょ」と噛み付いてしまいます。言われた方は「感情論ですけど何か?」という気分になります。こんな状況下で、話がかみ合うはずがありませんよね。
結果、人と会話をすること自体が億劫になり、孤独を選ぶようになってしまうのです。

気持ちの共感がない、講義のようなやりとり

アスペルガー人は、話の内容と目的が明確な時に限って、超論理的思考から発せられる的確な言葉を駆使して、小気味よく会話を展開させることができます。
これは、自分の知っている事をそれを望む人に教える時や、仕事の場で専門的な内容を説明する時などではとても有効なのですが、そうでない会話の場においてはこれが大きな足かせになってしまいます。

例えば雑談の中で「頭の悪い部下に悩まされている」という話が出たとします。
相手はただ愚痴を言ったに過ぎないのに、アスペルガー人は、世間一般に言われる「頭の悪い人」との共通点や法則性を探り、事の原因はその部下の性格なのか会社の体質なのか指導の方法なのかを分析し、さらに相手のとるべき行動を考察するなどして、何としてでも問題の解決に導こうとするのです。
相手は思いがけない方向に展開してしまった話にただ当惑するだけです。望んでもいないアドバイスをされて気分を害してしまうこともあります。

こういう空気を僕は何度も作ってきました。感情的に話を盛り上がることができないから、このように会話の目的地を設定して話を展開させなければ、話すことがなくなってしまうのです。

このように、アスペルガー人は共感力(相手の気持ちに寄り添う能力)が弱いので、相手の感情や意図を考慮した返答をすることができず、一方的に自分の考えを論じる講義のような形になってしまいます。
共感力が弱いのは、「表情」「目線」「声の強弱」「身振り手振り」などの言葉以外の情報や、言葉の中の間接的な表現に隠された情報などから、相手の感情を読み取ることが苦手なのが大きな原因です。そのせいなのか、アスペルガー人は会話中の適度なアイコンタクトが苦手で、相手と目を合わせないか、逆に相手の目を不自然に凝視してしまうことがあります。

また、問題解決という目的達成への執着が災いして、特に説教や注意喚起や説得など、相手に理解させたいという思いが強い時は、くどくどと同じことを何度も言ってしまう傾向があります。
言われている相手の気持ちに寄り添っていないから、これが逆効果であることには気づかないのです。

会話下手なのは、聞き下手だから

アスペルガー人が会話が下手な理由のひとつは、聞き下手だからです。
話を聞いている場面であっても、自分が話したいことの方に気持ちが行きがちなので、相手に合わせた会話のラリーを続けることが難しいのです。
自分が言いたい事が頭に浮かんでしまうと、話を遮ってでも話し出さずにいられません。

意識して相手が話し終わるまで待とうとすることもあります。しかし頭に浮かんだ事を忘れないように、それを頭の中で反芻させることに意識が集中するので、結局相手の話をよく聞けていないことが多いのです。

それに加え、超論理的思考で会話を展開させようとするので、同じように論理的に話を展開する人が相手でないと、会話が成立していないと感じて話を聞こうとしないこともあります。

熱くなってしまうと、その傾向はさらに強くなります。
討論番組などで、人が話している事などお構いなしに自分の主張をかぶせ合うような場面を見て「人の話はちゃんと最後まで聞けよ」とイライラしたことはないでしょうか。
あれよりはマシですが、あんな感じです。
自分の主張をより視聴者に強くアピールするための意図的戦略という側面もあるのかもしれませんが、アスペルガー人である僕から見たら、あの不快なやり取りは、アスペルガー人同士が罵り合っているようにしか見えません。

あんなに分かりやすい反面教師にはなかなか巡り会えないので、アスペルガー人は訓練の一環として討論番組を見るのもいいかもしれませんね。

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