「視界」の狭さは「人間関係」の狭さ / アスペルガー社会性の問題

アスペルガーの思考と生き様

アスペルガー人は視界が狭いと言われています。
視界が狭いといっても身体的な異常があるわけではなく、いわゆる人間の目の能力としての視界は、通常の人のそれとなんら変わりありません。
しかし目に映るものに対する脳の処理の仕方があまりに特徴的なため、結果的に視界が狭いということになってしまうのです。

極端な目的意識と過集中の傾向が視界をどんどん狭くする

アスペルガー人が行動する時は、何をするにしても「超合理的思考」から導き出される「目的意識」の影響下にあります。
それはどういうことかというと「とにかく無駄を嫌う」ということです。そして何を無駄と考えるかの基準はとてもシンプルで「いま意識を向けているもの以外のすべて」となります。

それは、アスペルガーには「過集中」という、いいのか悪いのかよくわからない特性があり、意識が向いているかそうでないかで脳の処理のしかたが極端に違うからです。
意識が向いているものへの集中力や観察眼は常人離れしている一方で、それ以外のものに対しては、まるで存在していないかのように扱います。
何か目的があって行動する時はそれに意識を向けることになりますが、アスペルガー人の視界の狭さは、この「目的への過集中」がとても大きく影響しています。

たとえば人が外を歩く時、通常は何らかの目的意識を持って歩いていると思いますが、その道中に存在する他の情報にも同じように気を配っているものです。
しかし超合理主義者であるアスペルガー人が外を歩く時は、その最大の目的である「いかにして障害物をかわしながら最短距離で目的地にたどり着くか」ということに意識が向けられ、それに集中しているような状態になっています。
そうなると、身の安全を守るために障害物を横目で確認しながら、自分が歩くと決めたルートを見据えて一心不乱に歩くようなかたちになります。
さらに無表情なことも災いして、アスペルガー人が外を歩いている時は、全く余裕が感じられない、とても声をかけづらい状態になっているのです。

さらに「人間嫌い」が視界の狭さを助長する

このような歩き方をしていると、無駄にヤンキーに絡まれることもありませんし、無駄にキャッチに捕まることもありません。
これは利点といえるかもしれませんが、問題は欠点にあります。
車や歩行者の予測できない動きに過剰なストレスを感じることはもちろんですが、最大の欠点は、歩くさまに余裕がなさ過ぎて人にマイナスの印象を与えてしまうことと、街ですれ違う知人を無視することになってしまうことです。

アスペルガー人は道行く人を「動く障害物」として横目で確認しているだけなので、その人がこちらに向かってどう動いてくるかにしか意識を向けていません。
だから障害物として意識するほど至近距離にいるにも拘らず、その人の顔や体格を認識していないことがあるのです。目的地や車や気になる店など、何か他によく見るべき対象があった場合、その傾向はさらに強くなります。

これは「人間嫌い」というアスペルガーの特性が「過集中」の中で露見しているような状態といえます。
ただでさえ他人との積極的な接触を好まない傾向が強いので、何か目的意識を持って動いている時は特に、過集中にかこつけて他人の「人」としての情報を「視界に入れていない」状態になっているのです。

これには「想定外のことに対応できない」というアスペルガーの残念な特性も影響しています。
外の世界にはたくさんの人がいて、たくさんの情報であふれています。普通の人はそこから無意識に有益無益の選択をして必要な情報を集めようとするものですが、アスペルガー人は、複数の情報をまとめて処理したり、予測不能な情報にスピーディな対応をとることができません。
だから目的に沿ったもの以外の情報を可能な限りそぎ落とし、思考を単純化させて、本来の目的を達成させようとします。
目に入ったものに対するこのような脳の処理の仕方が、アスペルガー人の「視界」を狭くしている大きな原因となっているのです。

アスペルガー人が視界を広くするためのちょっとしたテクニック

「この前あそこですれ違ったよね」
「見かけたけど、なんか急いでるみたいだったから声かけなかった」

このようなことを、僕は友人知人から言われたことが何度もあります。
以前は「なら声かけてよ」と思っていましたが、アスペルガーであることを自覚し自分の「視界の狭さ」や「外を歩いている時の余裕のなさ」を痛感している今となっては、「そりゃ声かけにくいだろうな」と自分に苦笑いするしかありません。

視界の狭さは人の心を遠ざけてしまいます。余裕がなくて話しかけづらい雰囲気の人に、人は好感を持つはずがありませんよね。
多くの人に好感を持たれる必要はありませんが、無駄にネガティヴな印象を与えてしまうのはマイナスでしかありません。
しかし「アスペルガー」という先天的な脳の機能不全そのものをどうにかするのは不可能です。そこで、何か簡単なことを習慣化させることでなんとかならないかと意識していたのですが、試行錯誤しているうちに、あるテクニックを発見することができました。

  • 口角に少し力を入れる
  • 少し着飾ってみる

この2つです。簡単すぎて拍子抜けかもしれませんが、これが意外と効果があります。

口角に少し力を入れるというのは、もともと持ち前の無表情を少しでも改善させるために始めたことでした。口角を上げたり笑みを作ろうとするとかえって不自然な表情になるので、少し力を入れるだけでいいのです。「たぶん仏頂面にはなっていないだろうな」と自分が思える程度で十分です。
外を歩いている時にこれをすると、不思議と顔が上がります。顔が上がると、人の顔の高さ辺りに視線が向きます。すると、人を「障害物」ではなく「人」として認識するようになり、一心不乱に目的地に向かうあの「余裕のなさ」が和らいだ気になります。
その結果、歩くのがいい意味で少し遅くなり、意味もなく周りを見てみる余裕が生まれてくるのです。
目線が上がったからといって道行く人の顔をいちいち確認することはありませんが、こちらを見ている知人に気づかない事態を回避できる確率は上がります。
広角に少し力が入っているだけで心がポジティヴに向くというのは、心理学的にも実証されているようです。

少し着飾ってみるというのは「自分がカッコいいと思う服や装飾品を、他人に見られる事を意識して身に着ける」ということです。
これは自分の心の中に「身の引き締まる思い」を沸き立たせるためです。
新しく買った服を初めて着て外に出た時をイメージすると分かりやすいかもしれません。
お気に入りの服を着て「身の引き締まっている」状態の時は、気分がいいので、自分を見る人がいるのなら少しでもよく見てもらいたい、という心理が働きます。
このような心理状態の時、人はより周囲に気を配ります。外を歩いている時は「目的地にたどり着く」という目的から少し意識をそらすことができるようになり、そこに余裕が生まれてきます。
アスペルガーの特性のひとつである「自意識過剰」を逆手にとったテクニックといえるかもしれません。

これらはまだ習慣化までには至っていませんが、ある程度の効果を感じているので、日々意識しては実践しています。

COMMENT

  1. 六川 より:

    こんにちは

    「他人に見られる事を意識  」
    これは生きていく上で大変重要なことですよね
    私は以前は他人の目なんか全く気にしていなかったと言うか
    気づいてすらいなかったので他人の目にはかなり奇異な人に映っていたのかと

    今は多少余裕ができて「他人に見られる事を意識  」するようになり
    一挙手一投足に余裕がなく視野が狭そうな人を見ては
    「自分もかつてはあんな見苦しい姿を他人に晒していたのか・・・」と思い
    過去の自分に赤面することがあります
    こんな経験ありませんか?

    • じゅうたろうじゅうたろう より:

      こんにちは。コメントありがとうございます。

      僕がこの記事を書こうと思った理由がまさにそれです!
      アスペルガーについて知れば知るほど、過去の自分に赤面しまくっています。

      余裕のない動きの人と遭遇して不快に思うと、自分に重ね合わせて、自分も似たような振る舞いで同じような不快感を人に与えていたことに改めて気付かされます。

      今は意識できているので多少は和らいだと思いますが、気分が下向きの時は忘れてしまうことがありますね。。

  2. 耕蔵 より:

    はじめまして

    私もASDを患っています。
    専門家の意見によれば、子供の頃から特別な養育を受ければ問題なく過ごせるとのことです。
    私は気がついた時には全てが手遅れで、完全に人間として失敗しました。

    周りに迷惑を掛けた罪滅ぼしにブログを始めました。
    もしお暇があれば、遊びにきていただければ幸いです。

    • じゅうたろうじゅうたろう より:

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      ブログ、見させていただきます!

      僕が子供のころは、アスペルガー症候群や発達障害の知識がまだ一般的に浸透していなかったので、問題のある子がいても「発達障害」と関連づける発想がなかったように思います。

      アスペルガーの特性によって数々の問題に悩まされましたが、その特性によって得た「感謝すべきもの」もたくさんあるので、今は「自分はこういう人生を歩むことになっていたんだな」と思いつつ、この先をより良くするための試行錯誤をしています。

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